井上勝夫先生著 「テキストブック児童精神医学」
心理・精神科臨床
2023.10.04
聞き取りと見立てを学びたいが、何を読んだらいいですか?に応えて
この質問に即座に応えられなかったのですが、
「この診断名はどういう症状なのか」ではなく
「こういう症状(訴え・観察されること)があったら、どういうことを考えていけばよいのか」
「どのようにして聞くべきことを尋ねていけるのか」というお尋ねと理解しました。
思い出したのが だいぶ以前ですが、インテークのあと、ご担当の主治医から
「このような内容はどのように聞いていくことで得られるのですか?」
と率直なご質問をいただいたことがありました
そのときも 「え?」とお答えが見つからずにいて
「あ、いえ、これは職人芸のようなもので、すぐに言語化は難しいのだと思います」
とフォローいただいたのですが
職人芸とは過分なお褒めの言葉ですが、つまりは年の功のようなものもあるわけで、そうした脳内のいわば羅針盤やセンサーは多くの師匠(書籍も含んで)や出会ってきた患者さんたちによって、育てていただいたものともいえます。言葉にしていくことは義務ともいえるでしょう。
ワタシにもあった新人の頃、故 吉田邦夫先生から、しばしば「入院時に看護師さんのとった病歴あるけど、とりなおしして」と依頼を受けました。ご家族とご本人から「追加の聞き取り」をしましたが、そのあともご報告しても何度も「とりなおしして」と。浅はかなわたしは(先生、見てないのかしら)と思っていました・・・。「何を聞くか」だけではなく、「どのように聞くか」、いえ、「聞く」というよりも「どのように理解しようとして、どのような言葉で尋ねているか」によって、現われてくるものは全く異なる。
とはいえ、私などが悪戦苦闘するよりも 「ことば」「ひと」をあたたかく ていねいに(専門職としての在り方にはしっかりと)語られる2冊をどうぞ。何度も読まれるのが良いですし、平易に述べられていることばですが、その深さをじっくりと、複数のメンバーで読み合わせていくのもよいでしょう。
ひと とかかわって ものごとを考えていくうえで、リベラルアーツがいかに豊かさをもたらしてくれるか、も感じ取ることができるでしょう。
テキストブック児童精神医学 日本評論社 2014
テキストブック児童精神科臨床 日本評論社 2017
井上勝夫先生は 2021年9月56歳でお亡くなりになりました。謹んでご冥福をお祈りいたします。
直接ご了解いただけないことが残念でなりませんが、折々に大切な言葉をご紹介していきたいと思います。