場面緘黙と医療

社会不安との関連・診断・薬物療法 など

大石 祥先生から2020年の研修会にて「こどもの社会不安と薬物療法」とのタイトルでにお話しいただきました。その際の資料を先生のご厚意によりご紹介します。(抜粋)

スライド間のコメントは松本が記したものです。

表からは、さまざまな不安障害の「好発年齢」です。そしてこのように見てみると、「スクールカウンセラー」がカバーする年齢とほぼ重なっていることの重大さを再認識します。

 DSM5における診断は、見知らぬ場面やおとなに「恥ずかしがっている」「怖がる」ということ(のみ)ではなく、「仲間」(毎日顔を合わせて共に過ぎしている同齢の集団)でも生じるものであること

なんでも「社会不安」と断じてしまわないように、よく場面による違いを聞き取って観察してみていきましょう

「わたしもすごく緊張するよ~~(でもなんとかやってるよ)」ということとの違いは? 強い恐怖を感じている人に安易な慰めで終われせることがないように。違いをよくかんじとってみましょう。

「早期介入であるほど予後が良い」

原因は?育て方?遺伝?など 質問されることは多いですし、それにこたえることはなかなか難しいものです。(そもそも一つの答えではなく複合的なわけで) その複雑さや相互関係を説明できるようにしたいですね。お役に立つ表です

この「情報収集」は親御さんや先生方からの聞き取りが中心になりますが、ここで「問うべきことを問う面接」が行われるように。何をどのように問うか。
どのような場面でどのように始まることが多いのか、状況依存性、よく見られる傾向とともに、矛盾するようにみえるがしばしばみられる言動の特徴など・・・・「知っておく」そして「関心を持って」尋ねることができるように。

環境調整と行動療法がまずは検討されるべきこと、となっています。

が、その緘黙という症状ゆえに、そもそもその行動療法を導入すること自体が困難ということも少なくありません。その場合は薬物療法を先行させて、行動療法が可能になる状態をつくっていくということが推奨となっています。

子どもへの薬物療法への不安はもっともなことです。それでも子どもさんに服薬をお勧めするとき、親御さんが決断されるとき、それは以下のような信念に基づいているものと考えます。

もし薬に未知の危険性が隠されているのであれば、子どもの発達中の脳は危険にさらされることになるだろう。しかし、精神科医も親たちも口を揃えるのは、薬を使わなければ、精神の病に侵された子どもをその病の手にゆだねるしかなくなるということだ。 (by Stanford Univ, Dr Chan)

WIRED NEWS 2004.0206 Randy Dotinga

そして逆に言えば だからこそ 人生の苦悩や現実的な不安や葛藤を示す子どもに安易に医療だ薬だと急き立てることもまた誤っていると思うのです。学校(など)からみた「緊急」と医療から見た「緊急」のズレは、やはりかかわっている大人に生じさせられる不安が基準になってしまっているからでしょうか。

場面緘黙の方たちは、かかわる大人にいら立ちや怒りを引き出すことがあっても(引き出されてしまう大人が時に存在するということです)、相手に不安をかき立てることはないがために、長く医療から遠かったとも言えるのかもしれません。

そして遠慮せずに言えば 苛立ちから来る悪意としか思えないような「指導」「支援」に黙ってさらされてきたのも場面緘黙の人たちです。

「意地の悪い”支援””」は心理的虐待ともいえるのではないでしょうか。