「ワーキングメモリ」をWechslerだけで語れるかについて
心理検査
2025.03.05
ChatGPTに聞いてみた
成人のアセスメントではWAISだけで「記銘力」を評価することはほぼない。(というか、なかった)
なぜならWAISのなかで評価される記銘学習はあくまで素材提示の方法も素材内容も、記銘力検査といわれるものの一部にしか過ぎないから。「視覚記銘力検査」としてBentonを、言語性の対連合学習としての三宅式(いまは古すぎて実施はむずかしい・・・)を使っていたはず。
実はMMS(Meaningful and Meaningless Syllables test)という、「記憶とは何か」というその概念の前提に立てば大変有意義なテストがあった。(MMSE:Mini MentalState Exam. とは異なります)
MMSは、視覚刺激で、量的な評価だけでなく、有意味対語と無意味対語の乖離、記憶の「崩壊現象」など多彩に評価をすることができていた。あまり一般的にならずいつのまにか販売もなくなってしまった。
「本当にワーキングメモリを見る」には、WMS(Wechsler Memory Scale)も行うべきでしょう。
成人のアセスメントをして「本当に」WMが際だって低いとしても、「WMが低い」と言い切らずに、「Wechslerで測定(観察できる)範囲でのWMが低く算出された」」というべきでしょう。
いつのまにかWechskerのWMだけで評価してしまえるような空気が強まってきた(それ以外の記銘学習の評価が軽視、無視されてきた)のは、ひとえにおそらく認知・記憶・学習などの「基礎心理学」の知識抜きに「実施法」のみ時には実施法の十分な読み込みもないままに。WISC実施が乱発されていること、そして子供用のWMSはないからでしょう。
(Bentonは子どもの基準値もあるはずですが、標準化はずっとされていないと思われるので実施したとしても使いにくいかもしれません。)
ここには「WISCは発達障害の診断のツールである」という誤解がいつまでたっても、どこで何度申し上げても本当に亡霊のように無くならない現象ともつながっているでしょう。
WISC(WAIS)の凸凹があれば発達障害?! 2023年10月29日コラムです
”いまだにWISCの凸凹を根拠に自閉スペクトラム症かどうか診断できると考えている心理士がいるのは残念です。”黒田美保先生のTwitter(X)より
WISC(WAIS)の評価点を「根拠」にASDとしたり、凸凹があれば発達障害 とする傾向に対し
黒田美保先生の「亡霊」「迷信」
下山晴彦先生の「都市伝説」 に加えて
岡田 智先生の「民間伝承」 という表現も見つけました。
このネーミングには、この誤解を放置してはいけないという危機感も感じます
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さてChatGPTにこの問題について質問してみました。
ちなみにChatGPTに質問をして回答を得た場合、その著作権はどこに帰属するかも確認しました。結論として問題はないだろうと思われます(ChatGPTの回答ということは明記するでしょうけれども)。とはいえ、ChatGPTのしていること?じたいが知的財産権を侵害していないのかという問題があり、文章の転載は誰かの著作物ではないかどうかには留意が必要と思われます。今回の文章は「事実に関する見解」であり、表現や着想のオリジナリティは持たないものと考えられますので引用します。ちなみに使用したのはGPT-4.0 mini です。また回答は長いので重要な部分を取り上げました。

質問:Wechskerテストにおけるワーキングメモリ評価の問題点を挙げてください
回答:Wechsker検査のワーキングメモリの評価は、特定の課題に依存しているため、受験者がその課題に慣れていない場合や、特定の戦略を持っていない場合、結果が不正確になることがあります。
* こうした形式の課題によくなじんでいるか、初めて出会うものか(経験や学習)
重要なのは「方略」に関する観点です。初めて出会った課題だったとしても、「方略」を思いつき、工夫できる能力を見ている と考えることもできます。そのため、ほかの能力と比して低いと感じた場合、すべての検査の終了後に「方略」を教えて達成の変化を見ることもあります。すると評価点が倍になったような場合、これは何の力を見ることになると言ったらいいでしょうか。「反射的にすぐに答えずに一度頭の中で確認してみよう」と言ってみたほうがいい時もあります。それは衝動性が達成を妨げていることがあるということを評価できたことになります。
「方略」はDN-CASで評価しますね。
こうした「追加検査」は高次脳機能障害を評価しているときは当然のこととして行っているのですが、最近はこうしたことをしない、というかしたことがない方も多いようです。「なんのために検査をしているのか」から考えることが大事でしょうね。
パーソナリティテストを一つだけ実施して解釈したりしないですよね…。
テストバッテリーを組むのは発達に関する評価でも大前提だったはずなんですが‥。
ちょっと極端なことを言えば、認知症に関する知識や医療がまだ十分ではなかった頃、「長谷川式で20点以下だから認知症」とか言われたなどというエピソードは珍しくなかったですね。
認知症の研究でご高名なK教授は 画像やアセスメントは2割 問診が8割 とおっしゃっていますね。
「発達障害」(この名称もそろそろなんとかならないものか・・・)も全く同じです。
質問:Wechslerでは対連合学習や遅延再生の課題がない点についてどう考えますか?
回答:おっしゃる通り、ウェクスラー検査が対連合学習や遅延再生を含まないことは、ワーキングメモリの評価において重要な制約となります。これらの要素は、ワーキングメモリの実際の機能をより包括的に理解するために必要な側面です。
1 対連合学習は異なる情報を関連づけて記憶する能力を指します。ウェクスラー検査では、主に短期的な情報の保持や操作が評価されますが、情報の関連付けや統合的な理解を図ることはできません。そのため、実際の学習や記憶のプロセスを反映しきれない可能性があります。
2 遅延再生は、情報を一時的に保持した後、一定の時間が経過した後に再生する能力です。このプロセスは、日常生活や学習において非常に重要ですが、ウェクスラー検査ではこのような遅延を考慮した評価が行われていません。これにより、実際のワーキングメモリの機能を正確に評価できないことがあります。
これらの理由から、ウェクスラー検査だけではワーキングメモリの全体像を把握することは難しいといえます。特に教育や臨床の現場では(後略)
臨床をしている人は、以前から職場によってはテスターしかさせてもらえない、ということはよくありましたが、そこから臨床的な面接を期待していただけるようになった時期もあったはずなのですが、診療報酬の問題でしょうか、最近はまたテスト三昧の方が増えているような…。そう、「そんなのいいからさっさとたくさんやれ」って言われたらやらざるを得ないでしょうし、診療報酬内ではなおさらなのでしょう。
というか、Wechsler実施して結果処理して簡潔な所見を書いたとしても5時間はかかりますかね…。そんなにコスパはよくないですよね・・・・。雑に実施すればもっと短くできるのかな…。
生育歴も聞かず、身近な方から様子を聞くこともなく、ほんとうにその方の来し方を理解し、行く末に役立つような所見が書けるのでしょうか???
Wechslerは、
「これまでこうだったんだと思うよ」
「こうしていけたらいいと思うがどうでしょうね」ということを伝えるための道具の一部であって
「所見」は単なる検査の解釈ではなく、これから先どこでそれを使ってもらっても、そのひとに必要なことを理解してもらえるような「生涯使えるメッセージカード」のようなものでありたい と思います。
そういうだいぶワガママなわたくしのアセスメントの向かい方にご理解をくださっている諸先生に、ほんとうに心から感謝を申し上げます。いつもありがとうございます。
