読書感想文は独語感想をひろって完成

自分の「思考」に気付き、良し悪しの評価をしない 楽しむやりかた 

自慢じゃありませんが小学校まで読書感想文は「得意」でよく選ばれていました。
先生に修正を助言いただいて授業中や放課後に完成させ、提出しました。
よく書けている、と先生から言われることは嫌ではありませんでしたが、この書き直しの清書が性に合わず、苦行でした。
(地区レベルで)選ばれる感想文には型があって、毎年その方に当てはめて書いているだけでしたが、高学年には我ながらつまらないことを書いている、と嫌になってきました。
ちなみに詩も嫌になっていました。擬人化と比喩の勝負みたいになってしまっているのが・・・。

高校生になって、文芸部の知る人ぞ知る方の「青春の蹉跌」の「感想文」、感想というより評論というか、これ自体が文学であるというような作品に出合い、衝撃でした。その方(M様と呼ばれていましたけど)摸試で国語の成績上位者であったわけではなく、「国語の点数が取れる」ことと言葉で表現し伝える力は異なるものであるという、当たり前のことにそのころ初めて気づいたりもしました。

高校2年生になって教養溢れるK先生の授業に出会い(「初めて出会う知性だった」と友人たちと今も語り草ですが)、夏目漱石「こころ」の課題としてわたしが割り当てられたものが「Kの心理」。Kについて想像し、倫理、自己矛盾、罪悪感、処罰感情の方向性 そのループ などの観点から理解しようとしたものをまとました。「ただの感想」と「論じる」ことの違いの一端に触れたといえる出来事でした。

自分のことを長々とお話してしまいましたが、大人になればわかること、当然のことも、子どものことはわからないものだとつくづく思います。


夏休みの子どもたちにとって、感想文は楽しみな子もいるでしょうけれども、

 原稿用紙のマスの中に文字を納められない子、
「書き写し」に困難を抱えている子、
「自分の考えや気持ち、なんでもいい」というあいまいな指示に困惑するばかりの子、
 3枚強の文字数を書ききる集中の続かない子
 読んだはいいけれども一部しか覚えていない子

などは少なくないですし、「合理的配慮」を求めても「書かなくていい」か、「枚数が少なくてもいい」と言っていただくにとどまっているかなと思います。「国語は苦手だから書けない」という声もよく耳にします。

そしてしばしば最後まで残り、親子喧嘩しながら、泣きながら完成・・・・。
「これであなたも感想文が書ける! みたいな本やYoutube は見てみましたが、上記のような困難さを抱えた子どもたちにはやはりハードルが高いと感じました。

わたしがスワンの会のグループ活動で「夏休みの読書感想文を書く会」を行ったときの方法をご紹介します。

1 条 件
〇親子で参加
〇短いお話でいいので読んでくる(目を通してくる)
2,3か所 付箋を貼ってくる 
 *この付箋を貼ってくる場所がポイント!
 「印象(こころ)に残ったところ」と言われますが、はて?「印象(こころ)に残る」とは何でしょうか?伝えているのは「本当に引っかかったところ」に付箋を貼ってきて、ということ
「この人おかしい!」
「こんなことするのアホだ!」
「これサイコーじゃん!」
「ここでこんなこと言うの意味不明だ!」
「チョー都合よすぎでしょ!」
みたいな

ツッコみたいこと 人物 シチュエーション セリフ に付箋を貼ってきてもらいます。
ご家族はそれに対してダメ出しはNG

2 付箋を見ながら聞いていきます
〇 親と子どもはそれぞれ別の家族とペアになります(自分の子どもじゃない人といっしょにやります。)
〇 付箋の部分を子どもに紹介してもらい、まず一つ選びます。
〇 その「部分」について大人は質問していきます、質問というよりも、傾聴に近いですね。関心をもって、理解しようとして尋ねる。基本は反射(言葉をそのまま返す)。時に明確化(つまりこういうことなんだね)。
〇 大人このやりとりを一つずつ付箋に書いていく。子どもの言葉は「文章」にまとめないでセリフをそのまま書いていくのがポイント、
例:✖「魔法使いは大人なのに嘘をついてはいけないと思いました。」
  〇「だって魔法使いは大人なんだからさ、嘘ついたらだめだよね!」

「なんで嘘ついたんだろうねえ」などの問いかけをしたなら、それは大人の問いかけとして区別して書いておく。できるだけ、「大人なのになって‥ね」くらいの反応がベスト。そのほうが子ども自身から生き生きした言葉が出てきます。

3 順番を構成していきます
〇 付箋はA3用紙1~2枚に張っていき、10~15枚くらいになったらいっしょに読んでいきます。
〇 それを並べ替えてみます(大人がややリードしてもいいでしょう)
〇 それを一緒に声に出して読んでいくと、それをしながら子どもたちは「でもさ、〇〇なんだよ」「自分だったらこうだけどなあ」「〇〇君のママはどう思う?」「自分のおばあちゃんは✖✖だなあって言ってたよ」みたいな言葉がまた出てきます。それを用紙に(付箋を張り替えたりしながら間に書き込んだりしていきます)
〇 これらを全部書けば枚数は行くかな?というくらいまで出来たらいったん終了です。

ここまで休憩を入れて90分 あとは自宅でやります

4 3でできたものを音声入力しましょう
Googleドキュメントで音声入力します。お子さんが自分で読み上げるとよいでしょう。
きれいな文章になっていなくてもラフな状態でOK. 
話ことばのまま書いていくことをお勧めします。
例:✖「ぼくがしゅじんこうなら、まほうつかいにぜったいにだまされないとおもいます」
  〇「まほうつかいのそんなことばにだまされて、まぬけだよ。どうしてだまされちゃったのかな。ぜったいにその〇〇がほしかったからかな。よくばっちゃったんだね。」

句読点や段落替えなどは話し合いながら行いましょう。
「だって」「そういえば」といった文章同士のつなぎは助言して読みやすくしましょう。

「せんせい、あのね」と日記を書きだすように、「おかあさん、あのね」とか主人公の名前で「○○、あのさ」と書き出したりしてもいいでしょう。

できるだけこれを印刷して読み、修正します。
原稿用紙のレイアウトで展開してみましょう。

5 印刷したものを書き写しましょう。
最後に印刷したものを書き写していきます。

いかがでしょう。横について、ああでもないこうでもないと、何度も消しゴムで消したり、結局親御さんが話していることをそのまま書いていたり…よりもずっと楽しく、「まあいいか」という体験になります。

このやり方で賞をとることはできませんし、もしかしたらふざけたことを書いている、と思われてしまうかもしれません。そういう意味ではこういう取り組みをしてみた、ということは担任の先生にはお伝えしておいたほうがいいかもしれませんね。(ここで紹介していた、と言ってもらってOKですよ)

「何感じた?」「なにか思ったでしょ?」と聞かれて 「なんも・・・」「なんもないってないでしょ!」というやりとりは終わりにしましょう

*「これを書けばいいんだ」という書くこと全体が書く始める前に見通せていること
*一気に書き上げずに少しずつ書いても大丈夫なこと(一度に書く量を調整できること)もポイントです

なお、高校生になってPCでの原稿提出が可能になった途端、生き生きとした文章で考えや気持ちを表現できるようになったケースも少なくありません。
自分の手で自分の字で書く」ということの縛りが、自分自身の生き生きとした思考や感情を感じ取ること、表現することを不自由にしているということも、よく理解しておきたい点です。

*なお 社会不安によって「自分の考えや気持ちを表す」ことに強い不安や恐怖を抱くお子さんもいます。そのような場合は、むしろ「決まりきった形式」に当てはめてしのぐような方法で書き上げてしまうのもよいでしょう。
とはいえ、場面緘黙で口頭での表現は難しくとも、書き言葉によって生き生きとして豊かな内的な世界を示すお子さんもいます、いずれにしても「決めつけない」ことは大事です。