摂食障害:なぜ受診が遅れるか?
摂食障害
2024.03.18
受診をかたくなに拒むなら、なおのこと急いでください!
以下も少々古い原稿ですが、同じことを言わなければいけないということに、この問題の難しさが表れているでしょう。春休みも危険な時期です。気にかかっている児童・生徒がいるならば新学期まで待たずに動きましょう。
部活動が発症に強くかかわっているケースも以前にまして増えています。
教育現場での共通理解やそれにもとづく取り組みを始める必要があります。
受診の遅れにはおよそいくつかの共通の背景が見られます
l 家族は心配しているが、本人の拒絶に会い受診させられない
l 担任や養護教諭は心配しているが、家族が無関心あるいは否認
l 担任や養護教諭は心配して家族とコンタクトを取りたいが、本人が強く抵抗
l 養護教諭は心配しているが、担任や部活動顧問の否認・抵抗にあい、介入できない
l 養護教諭やスクールカウンセラーが関わっているが、医療機関への紹介・連携が難しい
このようなことを理由にして結局は問題に気づかれつつも
*中学生からの発症であるにもかかわらず、高校入学の健康診断によって気づかれ、高校の勧めで受診してくる生徒
*高校では未治療のまま大学進学し、一人暮らしを契機に衰弱がすすんだり、過食へ転じて実家へ戻ることになるケース
などなど・・・・・・
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〇 「保護者が何も言ってこないから大丈夫なのだろう」という判断はできません。
本人自身がおなかの不調を主張したり、食べている様子を見せたりして迷っていることもあり
ますし、症状が進むほどかかわりが難しくなり、学校へのご相談すらためらっている場合もあり
ます。
またまれに保護者自身が摂食障害を疑われる場合や、子どもの健康よりも輝かしい運動の活躍や
優秀な成績が維持されることのほうを重視されている場合などもあります。
「せっかく頑張っているのに邪魔しないでください」というように・・・
これは保護者の側から見ると逆のことも言えます
〇 「学校がなにもいってこないから大丈夫だろう」という判断はできません
学校でも、「胃腸炎で食欲が低下しただけです」と明るく返事されたり、以前よりも学業成績やスポーツの記録が伸びているのをみて「むしろ元気で心配ないのかな?」と考えてしまうことがあるのです。
〇 学校現場が“共犯”になることも
先生方(指導者)の中から問題の否認や拒絶が強く示され、その矛先が養護教諭に向かうことがあります。厳しい言い方ですが、表面的な学業やスポーツの活躍に眼を奪われ、こどもの病的なマゾヒズムや抑圧、過剰な行動の根底にあるせきたてられるような強迫的な不安には眼を向けていただけないことによって起こります。
「こんなに頑張っている子を病気扱いするのか。台無しにする気か!」など・・・。
スクールカウンセラーは、このような「保護者、先生方、本人の抵抗」を理由に介入をおろそかにしてはいけません。
「このようにさせてしまう」のが摂食障害のひとつの特徴【罠】でもあるのです。
受診までに時間の経過が長い生徒や極端な低体重が放置されていたようなケースでは、脳萎縮や体重回復後も月経が再来しないなど、不可逆的な障害も見られています。
介入が本当に早く適切であれば、学校での対応で済む場合もありますし、医療につないでも外来通院で済むこともあります。早期の介入は回復も早いことは疑いのないことです。
この病態の実態や経過や予後や危険性について、「専門的な」知識と根拠を持って、説得や介入にあたる信念を持っていきましょう。
本人は心の底では助けを求めています。エスカレートしていくこだわりに怖れを懐いています。そのことに確信を持ちましょう。
学校にむけて使える参考文献
○『摂食障害の理解と治療のために』鈴木眞理監修
http://www3.Grips.ac.jo/~eatfamily/index.html
○小児の神経性無食欲症診療ガイドライン 小児心身医学会 「小児の心とからだ」 17(2) 2008
○スポーツ選手の摂食障害 NATA(全米アスレチックトレーナーズ協会) 大修館書店1999
自分の理解のための参考文献
○「ゴールデンケージ 思春期やせ症の謎」 ヒルデ・ブルック 星和書店 1979
○Vandereycken W.& Meermann R.W.Anorexia Nervosa:A clinician‘s Guide to treatment:Walter de Gruyter & Co.,Berlin;1984/末松弘行 監訳.
アノレクシア・ネルヴォーザ 臨床家のための治療ガイドブック. 東京:中央洋書.1991
* 治療的にかかわる場合は、オーダーメードのかかわりになっていきます
医療でかかわる側の私たちとしては、「あてにできる連携先」となれるよう研鑽いたしましょう
いますぐ!成長曲線のチェックをしてみましょう。
2006年日本学校保健会発行「児童生徒の健康診断マニュアル(改訂版)」より