摂食障害早期発見のための基本知識:成長曲線とその見方

SCの皆さん、養護教諭に声かけてみましたか?

周囲の養護教諭の方々にお尋ねしたところ、「学期ごとに測定している」という先生と、「年1回」という先生がおられました。おおむね小学生は4月の1回、中学生は4月と9月ということが大半の印象ですが、自治体ごとに違うのか、決まりはないのか、もう少しうかがっていってみたいと思います。

さて、身体計測は神経性やせ症の早期発見だけではなく、身体的な成長の「大きな、放置しないほうが良い 変化、偏り」に気づくことができる、その発見のためのものです。成長曲線の歴史、目的、その構成についてまず知っておきましょう。

以下のサイトから

” 成長曲線基準図といえば、通常身長と体重の成長曲線基準図(図1参照)のことをいいます。この成長曲線基準図には3、10、25、50、75、90、97の数字がついた基準線があります。この数字はパーセンタイル(百分位)といいます。分かりやすく説明すれば、3パーセンタイルの線は100人中前から3番目、50パーセンタイルは前から50番目に当る子どもの身長や体重の増え方を示しているのです。3から97パーセンタイルの間を正常範囲としています。しかし、3から97の範囲からはずれたからといって病的という訳ではなく、身長、あるいは体重の成長曲線が、これらの基準線に沿っていれば、適正であり、これらが基準線をまたいで上向き、あるいは下向きになった場合に病的原因があると考えます。また、-2.5SD(標準偏差)の基準線は極端な低身長の上限を示すものです。

 肥満度曲線基準図(図1参照)には、50%(高度肥満判定基準)、30%(中等度肥満判定基準)、20%(軽度肥満判定基準)、−15%(やせ前段階基準)、−20%(やせ判定基準)、−30%(高度やせ判定基準)の基準線があります。”

上記より

図1 成長曲線基準と肥満度曲線基準図
男子成長曲線基準と肥満度曲線基準図
女子成長曲線基準と肥満度曲線基準図

「成長曲線」で検索すると、学会や厚生労働省などのホームページからダウンロードできます。
乳幼児や小児をBMIの変化でみる表など、画像検索で多くの基準となる票を見ることができます、

さて「これらの基準線に沿っていれば、適正であり、これらが基準線をまたいで上向き、あるいは下向きになった場合に病的原因があると考えます。」というところがポイントです。
基準線の枠の中の範囲でできた部分をチャンネル(チャネル)(channnel)とよびます。チャンネルとは水路のことで、経路やルートともされますが、もともとの「水の通る道」という意味からは、自然な流れというイメージも感じられる言葉です。ラテン語のcanalis(運河、水路)が語源で、運河は英語ではcanalですね。

わき道にそれてしまいました。
そう、わき道にそれたところが要注意なわけです。
身長でいえば、こどもの身長が縮むということはめったにないとしても、少しずつ伸びていたとしても、期待される伸びがなければ「チャンネル」はどんどん下のそれになっていきますね。
体重も期待される増加がなければ「チャンネル」は下に位置していきます。

体重が減少する ことだけがチェック項目ではありません。

〇 体重のチャンネルが2つ下に位置を下げている
→ 体重が年齢に期待されるものに対してわずかであれば、「増えていてもチャンネルは下がる」ことになります。
〇 体重の減少はチャンネル1つ下だが身長のチャンネルも下がっている・もしくは身長がとまるべきではない年齢で止まっている・少々低くなっている 
→ 栄養・熱量不足のサインとして見逃さないようにします
〇 小学校5年生ころからチャンネルから少々外れて身長・体重ともチャンネルが下降したような傾向は、体型を意識し、食事を変え始めていることを反映していることがあります。小学校4,5年生のころふっくらとして体重がそれまでよりも増加したり、周囲の前で肥満を指摘・指導されたことが引き金となっているケースは少なくありません。
こどもの「恥」のトラウマに配慮した指導が求められます。
〇 「やせ」のこどもを発見するのではなく、「チャンネルからの逸脱」をみるという意味を確認しましょう。
〇 肥満とされる状態から体重を落とした場合、平均的な体重であったり、まだ肥満に属する体重であったとしても、その減少の仕方とその「方法」を確認したほうが良いです。
〇 成長曲線のデータは「〇kg以上の減少」といった基準で生徒をリストアップすることができます。

中学生は3kgでチェックしていらっしゃる先生が大半とお見受けしましたがいかがでしょう。
「3kgだとかなりの数の子供が引っかかってしまう」というご意見も読んだことがありますが、チェックされたお子さんをご覧になって、養護教諭の先生はひとりひとりよく把握されているので、留意すべき対象はおのずと絞られるように感じています。
「この子は〇〇の病気で入院中食事があまりとれなかったようだ。少しずつ指導受けつつ摂取量を増やしているようです」とか、「だいぶ減らして肥満度を下げて平均に近づいてますが、おうちの方と話をして、21時以降のスナックタイムと清涼飲料をやめただけでこれだけ減らせたようです」などなど、ひとりずつよく把握されています。

気になる生徒は まず担任の先生からもお話を伺いましょう。
どんなことを尋ねてみるのか、保護者に会うのが良いか、本人か、どんな話をしていくのが良いか などなどはまた次回に。

そこで話をすることの基本については、ここまでの摂食障害のコラムをお読みくださいね。