摂食障害:早期発見のために

もっとアンテナを、危機感を、スピードを!

以下 10年以上前の原稿ですが、昨今の小中高校生の劇的な増加にあたって、あらためてここに再掲します。また、「子どももダイエットする」ことに大人が慣れてしまっていて、児童・思春期の子どもの「痩せ」への感度も低下しているようにも思います。

大半の病気と同様に、早期発見と介入は重症化を防ぎます。逆に言えば、かなりの体重減少が放置された場合は治療は身体的にも心理的にも難渋しますし、それだけ現実的な生活に犠牲を伴います。

摂食障害は命にかかわる、そして難しい疾患です。学校や家族が説得したり、「様子見」をしていてよいものではありません。また食事量を単に増やそうとしても危険が伴うことも覚えておいてください。

養護教諭、スクールカウンセラーにすぐに相談してください。
医療に詳しくないスクールカウンセラーは早急に身近な心理職へ助言を受けて行動してください

摂食障害を理解する 

摂食障害は中学高校生での発症が多く、近年患者数の増加と低年齢化が報告されています。庄内でも例外ではなく、かつてはほとんどが高校生であったものが、現在は中学1~2年生での発症が目立っており、患者数も増加しています。

5~12%という摂食障害の高い死亡率は、その治療の難しさを物語っています。死亡をまぬかれたとしても、数年で5割、10年で1割の人に症状の持続や再発が認められると言われます。また、いったん発症すると思春期青年期の大切な数年と言う時期を食べ物へのとらわれで費やしてしまうことになります。

摂食障害を発症する人たちは、単に「ダイエットをしたい人」ではありません。

完全主義的な傾向・自分への過度の厳しさ・感情の抑制や否認の傾向などから、大人の目からは「頑張り屋の優等生」であることがほとんどです。しかし心の底では低い自己評価や不完全さへの怖れ、心底はうちとけられない孤独感などを抱えていることは多いものです。

そうした心理的な問題に取り組めるようになる必要はありますが、摂食障害という形での発病は犠牲が大きすぎるものです。発症した場合は、もちろんそのことが本人にとって意義のある体験であったと感じられるように、治療的なかかわりを行うわけですが、「摂食障害以外の症状選択」が望ましいことは言うまでもありません。

                

体重減少がすすむと、認知のゆがみや働きかけへの抵抗がどんどん強固になり、治療は難しいものになります。つまり、できるだけ早期に発見し、治療にのせることも重要です。この疾患がよく知られるようになってきたこととは逆行して、初診時の体重(BMI)はどんどん低下しています。

受診の遅れにはおよそいくつかの共通の背景が見られます

  • 引き受ける医療機関がない
  • 家族は受診させたいが、本人が強く抵抗・拒絶し受診させられない
  • 本人は受診したいが、家族の抵抗にあい、受診させられない

このようなことを理由にして

中学生からの発症であるにもかかわらず、高校入学の健康診断によって高校の勧めで受診してくる生徒、また高校では未治療のまま大学進学後に一人暮らしを契機に衰弱がすすんだり、過食へ転じてしまうケースも少なくありません。

受診までに時間の経過が長い生徒や極端な低体重が放置されていたようなケースでは、脳萎縮や体重回復後も月経が再来しないなど、不可逆的な障害も見られています。

*理解しにくい行動には理由があります。ほどほどの水準のことや、短期間のことは多くの人によくあることです。それに[極端にまい進してエスカレートしていく]のが病的な状態です。これが家族との大きな軋轢にもなります。叱責や管理、干渉ではなく理解し、本人と協力し合って脱出していく、というイメージをもつのがよいです。

また 回復を急ぐあまり、食べるよう励ましたり、好物をたくさん準備したり・・などはとても危険です。

急激な摂取によって

再栄養症候群(リフィーディングシンドローム)] による致死的な状態をもたらすことがあります。十分な管理の下に少しずつ回復していくことが、身体的にも精神的にも大切です。

[食行動の改善][身体の回復]は、あくまで治療のスタートです。

安心して、のびのびと、自分の考えや本音を表現しても大丈夫と思えるようにサポートをしていくことが大切です。

経過の途中で、自己主張ができるようになると、扱いにくくなることもあります。そのときに、叱責や見放すような言動があると、不安や罪悪感が高まり、一見落ち着いたように見えても、問題は別の形で出現したりします。

3年・5年と長い眼で成長、育ちなおしを見ていくことが大切です。

2010年の講義資料より