場面緘黙は人見知り・恥ずかしがりではありません。
場面緘黙
2024.01.17
“Shy” child? Don’t overlook selective mutism
以前のコラム(場面緘黙と医療)から続き。
“ もし薬に未知の危険性が隠されているのであれば、子どもの発達中の脳は危険にさらされることになるだろう。しかし、精神科医も親たちも口を揃えるのは、薬を使わなければ、精神の病に侵された子どもをその病の手にゆだねるしかなくなるということだ。 (by Stanford Univ, Dr Chan)
WIRED NEWS 2004.0206 Randy Dotinga
不安、恐怖のスイッチが強く作動する苦痛の強い状態です。
わたしが初めて場面緘黙と薬物療法についての症例報告を偶然目にしたのが2002年でした。当時醜形恐怖についてのアプローチを調べている中で出会いました。
強い社会不安と子どもの薬物療法についてのこの記事は2004年。この記事の中で紹介された少女はTVドキュメンタリーでも紹介されたとあります。
”SAD and selective mutism are often dismissed as shyness, misdiagnosed or simply overlooked in children. However, early recognition, diagnosis and treatment of SAD may prevent adverse outcomes and the development of comorbid conditions for the patient later in life. It is believed that familial factors and history can significantly contribute to and affect treatment outcomes.”
Rapid resolution of social anxiety disorder, selective mutism, and separation anxiety with paroxetine in an 8-year-old girl.
Robert B. Lehman, MD Baltimore, Maryland,
Journal of Psychiatry & Neuroscience (Vol. 27, No. 2)
アメリカらしい製薬会社の抗うつ薬キャンペーンの問題や 当初はactivationなどが報告される以前のことという面はあるのですが。
それでも強い社会不安(恐怖)の子どもさんに対して「なんとなくのプレイセラピーのようなもの」をしていたり、「害を与えない、与えられないような環境調整や助言」程度のことしかできていなかった当時の自分自身にとって。またこうしたお子さんが他所で「箱庭療法」をいきなり(たぶんなんとなく)導入された結果、激しい不安や恐怖が噴出してしまったケースをお引き受けすることが続いたこともあり、薬物療法の可能性について知っておく必要性を強く認識したものです。
“Shy” child? Don’t overlook selective mutism
Recognize this social anxiety disorder and treat it early to help prevent long-term dysfunction.
Contemporary Pediatrics July 1,2005
これも2005年のものですが、このタイトルが当時の場面緘黙への誤解が日本に限ったたことではなかったことを示しています。また、臨床的に(つまり高い専門性をもって)理解され、アプローチされる必要があるものであることを示しています。
薬物療法を導入するかどうかはそのお子さんの状態に拠りますし、先に述べたようにまずは十分な多面的で詳細な、観察を含む情報収集、環境調整、非薬物療法の導入 などが行われるべきでしょう。
薬物療法は、非薬物療法が可能になり、効果をもたらすための土台として必要と思われるときに導入となるでしょう。
もちろんその判断は医師によるもので、心理職がきめるものではありません。
しかしながらその判断のもととなる上記のような「材料」を収集できているか、適切なアプローチを実施していたのか、ということに問題があると思います。それをするのはでは学校や家庭やそのほかの多彩な場面での様子、そして矛盾して見える行動や内面のありそうを単純化せずに、そのままの姿を拾い集めること。
それから「スモールステップで」と、
「まずはあいさつくらいはできるようにしよう」
「お礼くらいは言えるようにさせたい」 というようなプラン?を聞くことがありますが
これは大きな勘違いです。
まったく「わが意を得たり」の書籍があります。
監訳の丹 明彦先生のアツいあとがきも Xもご紹介していこうと思います。
私自身先生のおっしゃる「理解ある風」であることによって、回避という問題を強化してきたのでは、という反省にも立って。
子どもの臨床をしている方々と勉強をごいっしょにすすめて行きたいと思いますが、まずは下記をご購入のうえ、お待ちくださいね。