「公認心理師でなければ”医師の指示”は無視していい」(!?)

だからスクールカウンセラーは公認心理師じゃない人がいい(?)というお声を遠くで耳に挟んだので・・・

2020年12月山形県スクールカウンセリング研究会での研修でお話したものから抜粋です

資料の多くを 冨永良喜先生(現在 兵庫教育大学 名誉教授)「ストレスマネジメントとトラウマVer.2」より引用させていただいております。

以下田代先生の原稿はこちらに掲載されていました

公認心理師であろうとなかろうと、その疾患に対して主治医がいるのならば、その治療方針と齟齬のないようにかかわること、自分のかかわりで対象に害を及ぼすことがないようにしなければならないのは、「ひととして」最低限度の良識的な態度かと思うところです。

「あんたの病気、〇〇じゃないの」とか「私の飲んでる薬に替えてもらったら」とか・・・いまどき茶飲み話でも非常識ではないでしょうかね。

ましていちおうは専門職として対象者の前にいるので、素人の思い付きという笑い話でスルーされるものとは異なるでしょう。てんかんのお子さんに「抗てんかん薬をやめるように」と医師ではないひとからの指示があったという驚くべきエピソードを実際に聞きました。理由は「認知障害が生じるから」と。これまた実際に服薬をやめたというのですから信じがたい出来事です。抗てんかん薬を自分の助言?で中止して、万一重責発作でも起こったら責任をとれるのでしょうか?亡くなることすらあることはご存じなのでしょうか。

おかしなことをおっしゃる方が存在するのは致し方ないとして、それを無批判にうのみにせず「なんだかおかしいな」という感触を大切にして、ほかの方々とその違和感を共有して、真実を見分け、めくらましの片棒担ぎにならないでほしいものです。「王様は裸だ」と叫ぶ勇気はなくとも(立場上難しくとも)、「王様…裸だよね?」とささやきあうことはできるでしょう。そして子どもたちに害が及ぶことには時に身を挺して(うまく立ち回ってでも)放置しないでいたいものです。

おわかりただけましたでしょうか。「公認心理師は面談に主治医の了解とか言うから面倒だ」ではなく
「義務を課せられているからこそ責任をもって連携できる公認心理師が行う意義がある」のである
そしてそもそも「公認心理師でなくとも医療との連携をとりながら支援することは必須」です

それから 「公認心理師」じゃないとしても、アセスメントや面談に専門職として従事している方ならば、何らかの学会に所属しているとか、それなりの専門性を担保する資格をお持ちでしょう。その学会や団体の定める倫理綱領を十分理解していれば自ずとたどり着ける結論でしょう。

もしそういう職業的倫理基準のある団体や機関に一切所属していないという方なのだとしたら、その方はアセスメントや専門的相談業務を行うには不適格ということになります。

世界的にみて日本の心理職の養成や資格のあり方はかなり特殊です(負の意味で)。
そもそも公認心理師の資格も、いまのところ(割合は不明ですが)ほぼ単に「試験に合格した(正答率60%で)ひとが得た資格」という以上の意味をもたない現状もあります。
日本における 検査道具や箱庭の購入、その実施の条件もかなり特殊ですので、そういった土壌がこうした誤解曲解の土壌になってもいるでしょう。

「職業倫理を問われない立場のほうが自由にやれるから、資格がない人のほうがいい」は誤解ですが、
「自分は資格はないからそういう行動基準に縛られなくていい」は 詭弁でしょう。