ICD-11 における排泄症群と心理臨床 2
子どもの排泄
2023.07.09
森野百合子先生「ICD-11 における排泄症群の診断について」を読む
②遺尿症
日本精神神経学会 連載 「ICD-11「精神,行動,神経発達の疾患」分類と病名の解説シリーズ 各論」から
遺尿症(Enuresis)は、生じる時間帯によって分けられる
「夜間遺尿症」
「昼間遺尿症」
「夜間および昼間遺尿症」
遺糞症と同じく、非器質性であること年齢的な条件もありますが
「不随意の場合も意図的な場合も含む
」とあります。
*臨床的特徴は
「遺尿症にまつわる恥ずかしさの感覚から、
二次的に情緒的な問題を生じる可能性」
(これはICD-10にも記載)
「公共のトイレを使うことに関する社交不安症」や
「楽しい活動をやめることへの拒否」の可能性 があるとされ
遺尿は他の精神および行動の疾患や,神経発達症の症状発現の一部として生じることもあれば,これらと並行して生じることもあることが記載された.
p770
「二次的な情緒的な問題」
夜尿症をいつか友人に知られるのではという怯え
スポーツで活躍しても遠征を回避する残念さ
修学旅行には行けないだろうという孤独感
投げやりな言動やからかいへの過剰反応に
こうした心情が背景にあるかもしれません
「社交不安と排泄」
場面緘黙のお子さんにいつどうやってトイレで用を足してもらうか
苦慮された経験がある方も多いでしょう
いっぽう「緊張しやすい おとなしい」とのみ見られている子どもさんが実は学校ではトイレを使用していないということが見過ごされていると感じます。
学校で失禁したことから不登校につながったり、膀胱炎を繰り返していた例もあります。
「楽しい活動をやめることの拒否」
御飯だよ、お風呂入りなさい といくら言ってもやめない
youtube、ゲーム、モノづくり、何でもよいのですが、
「途中でやめられない」「切り替えが苦手」なことによります
だれしも「もうちょっと・・・」と我慢する経験はあるでしょうけれど
「さすがにもうだめだ」「やばい!」というときは駆け込むでしょう
ところが、そのようなときに「もうだめだ」⇒「その場で排尿する」ことを選択する
(それを繰り返す)と考えるとよいでしょう
漏らしてしまった、膀胱炎になってしまった、という出来事が行動の変化にうまくつながっていないとも言えます。
大変わかりにくいのですが、
社交不安があると同時に羞恥心が乏しいという場合もある(ShynessとShame)のが難しいところです
多くの場合は「恥ずかしいと感じていないようです」と大人からコメントがあっても、
そんなことはなく、無表情でいても内心は困惑でいっぱい なことが大半なのですが
社交、社会的な対人場面では緊張、不安から反応がブロックされているようになるお子さんに
一方では「自分がどう見えているか」について年齢相応の判断が乏しいこともあります。
こうしたわかりにくさからも、お子さんのこころの世界をよく理解してみることが最初に大切と考えます。
「意図的」であることが反抗挑発の表れである場合は
困らせる手段や怒りの表現として
不適切な場所に排泄する ということがあります。
排泄に関連した「きもち」「かんがえ」「行動」に
心理職としてできることがたくさん埋もれている・・と
感じていただけたでしょうか
親御さん、学校、園の先生方もごいっしょにチームになって,チャレンジしてみましょう